【上昇気流】(2023年1月13日)

ヘンリー英王子=2022年9月、ドイツ西部デュッセルドルフ(AFP時事)

英国のチャールズ国王の次男、ヘンリー王子の自伝『スペア』が発売され、波紋を呼んでいる。兄ウィリアム皇太子との確執、17歳でコカインを吸引したことのほか、陸軍時代にアフガニスタン戦争で敵の戦闘員25人を殺害したことなどを告白している。

発売元のペンギン・ランダムハウスによると、発売初日に電子書籍やオーディオブックを含めてノンフィクション分野では史上最多の140万部の売り上げを記録した。ただ、内容に対して英世論は批判的だ。

王子は戦争中、攻撃ヘリコプター「アパッチ」に乗り込み、イスラム主義勢力タリバン戦闘員の掃討に従事。「人間と思ったら殺せない。彼らはチェスの盤から排除された駒だ」と考えるように訓練されてきたなどとも説明している。英議員や軍関係者からは「王子自身や英兵を危険にさらす発言だ」との批判が出ている。

事実、タリバン幹部はツイッターで「あなたが殺したのはチェスの駒ではなく人間だ」と反発している。王子がテロの標的となる恐れは十分ある。

書名には、王位継承などでは長男のスペア(予備)の立場であったことへの複雑な思いが込められているのだろう。現在は公務を引退し米国在住の身とはいえ、あまりに軽率な行為としか言いようがない。

亡くなったエリザベス女王が存命の頃、王子はテレビのインタビューで「女王はいつも正しい」と語っていた。女王の正しい判断がどこから来ると考えていたのだろう。

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