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「門松は冥土(めいど)の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」(一休宗純)。あす9日は「成人の日」であるとともに「とんちの日」でもある。一休さん(1〈いっ〉と9〈きゅう〉の語呂合わせ)にちなむ。アニメにもなった頓智(とんち)話で有名な一休さんは、実在の人物で、室町時代に活躍した禅僧の一休宗純のことである。
頓智話自体は江戸時代に作られたものだが、実際の一休は数々の奇行で知られ、正月に髑髏(どくろ)を持って歩いたというエピソードもある。
めでたい年の初めは、また冥土への道でもあるという仏教的無常観を表しているという説や、当時の政治や仏教界の権威を風刺したという解釈がある▼このところ、東京では晴天の日が多い。正月気分が薄れて、食べ切れなかったモチを持て余している家も多いのではないか。
「どんどの火小さくなりたる空に富士」(勝俣泰享)。この15日ごろには、神社などで初詣の次に行われる「どんど焼き」(左義長やお焚(た)き上げとも)の正月行事がある。神職の禰宜(ねぎ)や氏子の人々、近所の家族連れなどが集まり、門松や正月飾り、書き初め、ダルマなどを焚き上げていく。火事対策に消防団の人も参加する。
暦が時間の区切りを表すように、どんど焼きの習俗も人々の意識の変わり目を示すと言っていい。正月で迎えた歳神を送り、1年の無病息災を祈る行事でもある。どんど焼きを迎えると、初詣とは別に、新しい年が始まった実感がする。日本人として大切にしたい行事である。