年の瀬、京都・清水寺で発表される今年の一文字漢字は「戦」に決まった。
ロシアによるウクライナ戦争は収まるどころか、激しさを増している。また中国による台湾侵攻が現実味を帯びてきた。そんな戦争への危機感が表れている。
ただ、あまり好きな漢字ではない。筆者が選ぶ今年の一文字漢字は少子化の危機を反映した「減」である。やはり、この2年コロナの影響もあり、婚姻数、出生数が激減した。
今年の出生数は80万人を割り込み、77万人前後となる見通し。初めて100万人割れした2016年からわずか6年で2割減った。婚姻数も50万件をわずかに上回る見通しだが、6年で12万件も減っている。
国立社会保障・人口問題研究所が10月に公表した「結婚と出産に関する全国調査」を見ると、結婚し、家族をつくる意欲そのものが明らかに下がっている。
これまで「いずれ結婚するつもり」と考える未婚者の割合は9割近くいた。ところが、今回調査では結婚意思が男女とも低下し、そして「一生結婚するつもりはない」と考える割合が未婚男性17・3%、同女性14・6%と、大幅に上昇した。
結婚意欲の低下だけではない。子供を持つ意欲も下がった。結婚意思を持つ未婚者に希望子供数を尋ねると、全年齢で減少し、2人前後で推移していた既婚夫婦の子供数も明らかに減少し始めた。
背景には経済的理由だけではない、個人の生活や価値観を大切にする考え方の変化がある。子供を持つ理由を尋ねると、「結婚して子供を持つことは自然のことだから」が大きく減少した。
こうした日本人の家族形成力の低下は、見えにくい静かなる有事である。「戦」に備えて、国の防衛費2%増額が決まったが、国を守る人がいなければ国防は成り立たない。来年こそ、もう一つの有事に備え、少子化克服に本腰を入れてほしい。
(光)