トップコラム【上昇気流】(2022年12月27日)

【上昇気流】(2022年12月27日)

十三代目市川團十郎白猿さんの襲名披露興行が始まり、来場者らでにぎわう歌舞伎座前=11月7日午前、東京都中央区

東京の歌舞伎座で11月から開かれていた市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿さんの襲名披露公演は、昨日千秋楽を迎えた。今年はあまり明るいニュースがなかったが、その年の瀬に團十郎さんの襲名口上で「睨(にら)み」を見ることができたのは来年に繋(つな)がる明るい材料だった。

「それでは、ひとつ睨んでご覧にいれまする」と團十郎さんが両目を真ん中に寄せると、周りのお客さんから「わぁ凄(すご)い」と驚きの声やざわめきが聴こえた。2階中ほどの気流子の座席へも、その目力は伝わってきた。

睨みは市川家独特の見得の一つで、市川家の崇敬する成田山新勝寺の不動明王の姿に由来するという。邪気を払い、睨まれれば1年間、無病息災で暮らせると江戸っ子たちの人気を集めた。

襲名前の5月にも、東京スカイツリー開業10周年を記念し、その634㍍の天辺から世界平和と新型コロナウイルス禍の収束を祈念して睨みを披露している。

約2カ月間に及ぶ公演では毎回、この睨みを披露してきたから、かなりの数の人たちが恩恵に浴したことになる。内外の課題克服に「睨み効果」を期待したい。

芝居の方は、歌舞伎十八番の一つ『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』。助六実は曾我五郎の團十郎さん、揚巻の中村七之助さん、白酒売新兵衛実は曾我十郎の中村勘九郎さん、通人里暁の市川猿之助さんが盛り上げ、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条時政役の坂東彌十郎さんが髭の意休を演じて花を添えた。

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