トップコラム【上昇気流】(2022年12月24日)

【上昇気流】(2022年12月24日)

イルミネーション

イルミネーションに彩られた街にクリスマスソングが流れている。いつもの風景とは言え、つい足取りが軽くなる。これも福音の恵みだろうか。

キリスト教と歌との関わりは古い。イエス・キリストの最後の晩餐(ばんさん)では「彼ら賛美を歌いて後オリブ山に出でゆく」と新約聖書にある。中世には「グレゴリオ聖歌」が編纂(へんさん)され、教会で歌われた。

日本人が初めて賛美歌を聞いたのは戦国期の1552年、イエズス会の宣教師が山口で営んだミサでのこととされる。キリシタン大名が設立したセミナリヨ(神学校)では毎日1時間、唱歌や楽器の練習を行ったという。

「世が乱れる」と新たな歌が顕(あらわ)れる。英国では産業革命が本格化した18世紀後半、チャールズ・ウェスレーが数多くの賛美歌をつくった。兄ジョン・ウェスレーが馬にまたがって全英を駆け巡ったメソジスト派の伝道集会で歌われた。

米国では19世紀後半、作家のマーク・トウェインが「ギルディッド・エイジ」(金ピカ時代)と名付けた拝金主義の時代にアイラ・サンキーは福音唱歌(ゴスペルソング)を創作し、大衆伝道者ドワイト・ムーディーと共に覚醒運動を推進した。荒れる人々の心を癒やし、社会改革を牽引(けんいん)したのが賛美歌である。

「歌は世につれ、世は歌につれ」という。日本人を覚醒させるほどの歌がいまだ顕れないのは、時が満ちていないからか。それともそんな精神は消え失せたか。クリスマスイブの日に考える。

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