【上昇気流】(2022年12月9日)

「Hanada」(12月号)

月刊『Hanada』に連載中の「古書現世」店主、向井透史さんの『早稲田古本劇場』が同名のタイトルで本の雑誌社から出版された。9月には、東京・神保町の東京堂書店で週間売り上げ2週連続1位を記録した。

東京・西早稲田で古本店を営む向井さんの日常を日記風に記したもので、かなり風変わりな人も含んだ、お客さんたちとのやりとりに何度も笑ってしまった。軽妙でシュールな文章も魅力だ。

古書現世の看板には「珍しい本が安く買える店」とある。気流子も、店の前に置かれたワゴンの100円均一の廉価本コーナーで、たびたび掘り出し本を見つけ購入したことがある。

こんなに安い値段でいいのかしらと、申し訳ないような気持ちになる時もある。しかしこの本を読んで、それなりに売り上げに貢献し、店主の励みにはなっていることを知って、少し気が楽になった。

西早稲田は神保町に次ぐ古書街で、30軒ほどの古書店が並んでいる。神保町に比べて値段が安めという印象があり、特に学生時代はよく足を運んだ。

その早稲田通りに向井さんの本にも出てくる食堂兼和菓子屋さんがある。先日、豆大福を買った折、店の人が「古本屋さんも少しずつ減ってきてね」と残念そうに言っていた。学生が本を読まなくなったことや店主の高齢化によるものだろう。それでも、向井さんのように若い店主が頑張っている店も結構ある。個性ある店を守り、日本の読書文化を支えてほしい。

spot_img
Google Translate »