【上昇気流】(2022年12月8日)

J・S・バッハ

新刊書を見ようと書店に立ち寄ると、クリスマスの音楽が流れていた。もう今年も最後の月だと実感した。流れていたのは近代の曲だったが、もう少し古い時代の曲の方が味わい深い趣がある。

この時期、J・S・バッハの曲でよく演奏されるのが「主よ、人の望みのよろこびよ」だ。これはカンタータ第147番「心と口と行いと生命をもて」の中のコラールで、ピアニストたちがよく演奏している。

実に美しく、心に響く、キリスト教文化圏ならではの音楽だ。西洋の音楽は、他の文化圏と違った独自の道を歩んできた。それを世界的な視野から教えてくれるのが、故郡司すみさんの著書『世界の音』(講談社)。

楽器についての書だが、西洋の楽器は数学と深く関わり、種々の計算法を用いて理想的な音を追求したという。しかも、それが宇宙論という大きな枠の中で行われてきた点に特徴がある。

使用楽器の変遷も著しかった。東西の対比で言えば、西洋は打楽器が少なく、代わりに弦楽器やラッパ類、リードの付いた管楽器の使用が多かったという。共鳴弦を張った弦楽器では繊細で優雅な響きが追求された。

バッハの『平均律クラヴィーア曲集』(第1巻)「前奏曲とフーガ ハ長調」を、天地創造の業を称(たた)えた音楽だと解説する研究者がいる。なるほどと共感した。宇宙論と数学の結実だ。バッハは作品を完成すると「SDG(神のみ栄光あれ)」と記した。天からの賜物だった。

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