トップコラム【上昇気流】(2022年12月6日)

【上昇気流】(2022年12月6日)

大英博物館

ロンドンの大英博物館が収蔵するギリシャ彫刻群「エルギン・マーブル」。この返還を求めるギリシャ政府と博物館との間で「秘密協議」が行われたという。

この彫刻群はかつてアテネのアクロポリスの丘に建つパルテノン神殿を飾っていたが、19世紀初めに英国外交官のエルギン伯爵が、当時ギリシャを統治していたオスマン帝国のセリム3世の許可を得て、壁面から剥がし英国へ運んだ。

公開されると英国ではギリシャへの憧憬が深まり、ロマン派詩人バイロンもギリシャを訪ねる。ところが彫刻が剥ぎ取られた神殿の無残な姿を見たバイロンは、エルギン卿の「略奪」を厳しく非難。仕方なくエルギン卿は、彫刻群を国家に寄贈する。

気流子も大英博物館を訪れるたびに、フィディアスの手になるという彫刻群の前に足を運んだが、感動はいま一つだった。アテネのアクロポリス博物館で彫刻群を観(み)た時、その理由が分かった。外光も取り入れた展示場で彫刻たちは実に生き生きとし、語り掛けてくるようだった。

北の都ロンドンで観るのとは見違えるようだった。作品は作られた風土の中で鑑賞するのがベストである。

返還問題についてギリシャのミツォタキス首相は「双方に利益となる解決策を見いだすのは可能だ」と期待感を示す。一方、大英博物館側は「素晴らしい収蔵品を手放すことはない」との声明。問題は簡単ではないが、ギリシャの光の下で古典期の傑作彫刻群を観てみたいものだ。

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