
散歩していて陽(ひ)が照りだしたり、あるいは急に歩を早めたりすると、すぐに体が汗っぽくなってくる体験はたいていの人にあるのではないか。身体の恒常性を保とうと体内の水が実に敏感に反応する。
人体の6~7割を占める水のうち、5%は血液として血管内に、40%は各臓器の細胞内に、残り15%は血管と臓器細胞の間の「間質」にある。しかし血液や臓器を生かす水の流れの追跡は容易でなく、体内の巡りには謎の部分が大きい。
このほど医薬基盤・健康・栄養研究所などのプロジェクトチーム(PT)は、1人の成人が1日で総水分量の平均約10%を代謝によって体外に失っていることを突き止めた。個人差は小さくないが、推測できる代謝式も導き、その研究成果は米科学誌サイエンスに掲載された。
同研究所運動ガイドライン研究室の山田陽介室長は「水分不足が積み重なると、認知症や脳の障害につながることも考えられる。心臓や腎臓への負荷などと合わせ、関連を調べたい」と話す。水の流れのさらなる解明で、生命現象の有機性を追究してほしい。
血管の形状と似ているのが河川。地球の表面、地下に張り巡らされ、水を配分する経路だが今、世界各地の川が干上がるなど深刻な水不足が地球規模で問題となっている。
その当事国だけでなく、大国間では水の争奪戦が激化の様相だ。気候変動による干ばつ現象も見過ごせず、すべての地球人が深慮しなければならない事態だ。