【上昇気流】(2022年11月19日)

ドイツの歴史哲学者シュペングラー(Wikipediaより)

ちょうど100年前の1922年にドイツの歴史哲学者シュペングラーは新たな文明論を完成させ世に問うた。文明は発生―生育―壮年―老衰の四つのリズムをたどり、春夏秋冬の4拍子を打つ、と。いささか決定論的であるが、思い当たることは多々ある。

「文明の老衰期」がそうだ。そこでは魂の創造力が枯渇し、人々は無形式の「大衆」となり、衆愚的「デモクラシー」を志向する。民族は解体し「世界主義」的となり、都市は病的な「メトロポリス」へと拡大し、その中で大衆を扇動する「カエサル主義」が出現し専制的独裁を敷く。芸術も魂を失い、ただ人々の感覚を刺激するだけのものとなっていく。

それでシュペングラーはこう警鐘を鳴らした。「すべての文明は偉大な宗教とともに始まり、世界都市における唯物主義のフィナーレで終わる」(村松正俊訳『西洋の没落』)。

そこから脱する方策は英国の歴史家トインビーが『歴史の研究』で探っている。それによれば、文明が不幸と悲劇をくぐり抜ける、いわゆる「文明体験」が人々の目を崇高な精神的次元へと開かせ、それが「高等宗教」を成立させたが、その宗教意識が低落すると文明は没落する。だから霊性を取り戻す以外に文明を蘇生させる道はない、と。

宗教は唯物論者には奇異に映っても社会の基底をなしてきたのである。それを軽んじるメディアの喧騒(けんそう)が文明のフィナーレのように聞こえてくるのは空耳だろうか。

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