今月5日は、伝統的なキリスト教の祝日である「諸聖人の日」だった。毎年10月30日以降の最初の土曜日に、フィンランドでは諸聖人の日として祝われる。キリスト教の聖人や殉教者を称(たた)えるとともに、身内や親しかった故人を偲(しの)び追悼するのだ。
人々は、諸聖人の日や前夜に墓を訪れ、花を供えキャンドルに火を灯(とも)す。それぞれの地域にある教会の墓地では、何千ものキャンドルの灯(あか)りで美しく印象的な光景が広がる。また、墓のそばで立ったり座ったりしながら、亡くなった人との思い出にふけったり、墓石にキスをしたりする人々の姿も珍しくない。
また、人によっては、亡くなった人や先祖が家にやって来るということで、サウナを温め、夕食を準備する。亡くなった人たちが先にサウナに入り食事をした後、家族でサウナに入って食事をするという。最近亡くなった親戚や家族の家では写真を飾りキャンドルを灯し、故人を偲ぶのだ。
さらに、多くの家では、玄関、庭先、テラスでキャンドルが灯される。諸聖人の日の夕方に行われる教会のミサの最後には、昨年の諸聖人の日以降亡くなられた、その教区に所属する信者の名前が一人一人読み上げられ、彼らの冥福を祈るひとときがある。
戦死した軍人たちを慰霊している墓地にも、多くの人が訪れてキャンドルに火を灯し、彼らに敬意を示す。その姿にはフィンランド人としての団結心を感じさせられる。諸聖人の日は、厳粛で静かな祝日だ。(Y)