トップコラム【上昇気流】(2022年11月10日)

【上昇気流】(2022年11月10日)

医師が患者に処方する文化施設の一つ、ブリュッセル市立博物館=11月2日、ブリュッセル(時事)

アートセラピーという言葉を知ったのは、米国人画家ナターシャ・シャピロさんの個展を取材した時だった。2010年11月に東京・目黒区の画廊で開かれ、花や都市の風景の作品が展示されていた。

彼女は1968年にニューヨーク市で生まれた。9歳から2年間東京で学び、その後、ハーバード大学に進学。19歳の時から本格的に絵の勉強を始めて、パリで研鑽(けんさん)を積み、世界各地の画廊で作品を展示していた。

アートセラピーとは絵画を基にした精神療法で、絵を描くことが心を癒やすことにつながるという考えによる。「私が19歳で画家として出発した時、作品は私の恋人、私の救済、私の瞑想でした」と語っていた。

アートセラピーは日本よりも欧米で盛んらしい。ベルギーのブリュッセルで、心の不調に苦しむ患者に、治療の一環として医師が美術館などの無料鑑賞券を「処方」する取り組みが行われている(小紙11月8日付)。

文化を通じて人々のウェルビーイング(身も心も満たされた状態)に貢献したいという目的だ。市内5カ所の文化施設には市立博物館や現代美術を展示するギャラリーが含まれ、患者は医師と相談して1カ所に無料で入館できる。

同伴者も3人まで無料。市の文化・観光部門の責任者が19年にカナダを訪問した時、この取り組みが行われているのを知って自国で実現させた。ナターシャさんはセラピストの免許を持ち、その大きな効果を語ってくれた。

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