
国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が、エジプトのシャルムエルシェイクで始まった。温室効果ガスのさらなる排出削減と共に、アフリカ地域を代表するエジプトが議長国ということで、途上国に対する先進国の資金支援も重要な議題となる見込みだ。
現在の地球温暖化は、先進国が過去何十年もの間、温室ガスを排出してきた結果であり、その被害を一番被っているのは自分たちという意識が途上国側には強い。温暖化の影響は先進国も受けているが、途上国がより脆弱(ぜいじゃく)であることは事実である。
こういう構図が実は米国内にもあることを、米国のノンフィクション作家エリザベス・ラッシュ氏の『海がやってくる』(佐々木夏子訳、河出書房新社)を読んで知った。
同書は2018年の全米アウトドア・ブック賞を受賞し、ピュリツァー賞の一般ノンフィクション部門で最終候補となった作品。海面の上昇は太平洋の島嶼(とうしょ)国だけでなく、米国の海辺の沼沢地などでも深刻な問題となっているのだ▼著者は東海岸から始まり、南部のルイジアナ州やフロリダ州など各地を訪問。海面上昇と大型ハリケーンの襲来で、住み慣れた沼沢地に近い土地から立ち退きを余儀なくされた人々を取材している。こうした人々の多くが先住民や低所得者だ。
特に先住民は生き残りのため、決して住みよいとは言えない低湿地に住んできたという。米国はそういう面でも世界の縮図なのかもしれない。