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韓国ソウル市の繁華街・梨泰院の雑踏事故では、事前対策として路地を一方通行にする手があった。梨泰院の大通りに出る路地は何本かあり、それぞれ進行方向を決めておれば大惨事は避けられたのではないか。
対向する流れがそれぞれゆっくり移動していても、ぶつかり合った地点である限度を超えると「特異点」が生まれ、その周りに予測もできなかった激しい動きが始まってしまう。事故はその例だろう。
大きな破滅や破局を英語でカタストロフィーというが、連続する現象の中で不連続性が発生する過程を予想するカタストロフィー理論というのがある。突然の破壊・崩壊が起こるプロセスなどを追究する。
その理論などを研究する工学者らが、道路交通の分野で発言機会を持ち、普段から行政の助けをしていれば、より臨機応変な交通対策が可能であろう。韓国の事情はよく知らないが、官と学の人事交流はそう難しいことではないはず。
事故ではないが、日本では明治期以来、行政と科学者の連携が続いてきた分野に地震災害対策がある。地震は地下のひずみエネルギーが臨界を迎え四方に伝播(でんぱ)する現象で、それにどう対処するか。
この間、地震の予知研究なども行われたが、今日では被害をいかに最小限で食い止めるかというテーマの「減災対策」として結実している。韓国の雑踏事故は何とも痛ましいが、事故の教訓を丁寧にすくい上げ、今後の事故防止、防災対策によく生かすことだ。