ペーボ博士のノーベル賞受賞

スバンテ・ペーボ(2016)(Wikipediaより)

今年は日本人のノーベル賞受賞者が一人もいなかったこともあり、メディア報道は実に静かだった。

唯一、日本人の関心を呼んだのは、医学生理学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士である。遺伝情報解析技術によって、4万年前に絶滅したネアンデルタール人のDNAが、人間の祖先と言われるホモ・サピエンスにも受け継がれていることを証明した画期的な研究だ。

博士が沖縄科学技術大学院大学の客員教授に在籍していたことから、同大学を初めて知ったという日本人も多かった。

OISTと呼ばれ、2011年に沖縄復興と世界レベルの研究拠点を目指し、政府主導で創設された私立の大学である。

5年制博士課程を持つ学際的大学院大学で、45カ国・地域から226人の博士課程学生が在籍しているという。学生の84%、教職員の41%が外国人というから、日本の大学のイメージではない。

創設わずか8年目で、ネイチャーの「質の高い論文の割合が高い研究機関2019」で世界9位、国内1位となった。

日本の論文の質低下が止まらない中、短期間で高い評価を得た背景には潤沢な資金がある。毎年200億円超の国の補助金が投じられ、理事や教授陣にノーベル賞受賞者を招聘(しょうへい)するなど最高の研究環境を整えることで世界トップクラスの研究者が集まってきた。

ただ、補助金を出す政府・財務省は「高コスト構造を改善し、外部資金を増やすべき」とOISTに厳しい姿勢を見せ始めている。

コロナパンデミックの20年7月21日付の日刊工業新聞で「将来の危機に対処していくためには何が必要だろうか?そう、何よりも科学である」と訴えたピーター・グルース学長は今年末で退任となる。

今回のペーボ博士の受賞がOISTにプラスに働くことを期待したい。

(光)

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