トップコラム【上昇気流】(2022年10月22日)

【上昇気流】(2022年10月22日)

北京市内の高架橋に掲げられた横断幕を見つめる市民(ツイッターから)

「不要老鄧、要小鄧」――。1980年代の中国にこんな流行語があった。老鄧とは当時の中国の最高実力者である鄧小平、小鄧とは台湾出身の歌手、テレサ・テンさんの本名の鄧麗君のことで「鄧小平は要らない、鄧麗君が欲しい」という意味である。

テレサさんが歌った「空港」や「時の流れに身をまかせ」などのヒット曲は、昭和の人にはカラオケの定番だろう。大陸でも若者の間で大いに歌われ、鄧小平よりも人気があった。

「不要」(要らない)と「要」(欲しい)は是非がはっきりしていて分かりやすい。最近ではこんなのがある。「不要封鎖、要自由」(封鎖は要らない、自由が欲しい)、「不要文革、要改革」(文化大革命は要らない、改革が欲しい)、「不要領袖、要投票」(独裁者は要らない、投票が欲しい)。

これは中国の首都・北京の高架橋に掲げられた巨大な横断幕の一節である(小紙14日付)。「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」ともあった。横断幕を掲げた人物は不明で、当局によって直ちに撤去させられたという。

高架橋がある場所は近くに北京大学などがある「大学区」と呼ばれる地域だ。大学は中国の民主化の発生源である。86年の民主化デモは安徽省の科学技術大学から始まり、当時の胡耀邦総書記の失脚の一因となった。

中国共産党大会は習近平総書記の「3期目入り」祝賀ムードだが、横断幕は「不要共産、要民主」の地下水脈の一端を垣間見せたように思われる。

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