
ある民放の男子アナウンサーが「自分は文系出身なもんで、理系はどうにも苦手ですから……」などと語っていた。
「理系が苦手」という事実を述べていたにすぎないと言えばその通りなのだが、気になったのは、理系が苦手であることを少しも困ったこととは感じていない点だった。
「××が苦手」は、普通「よろしくないこと」の場合に使われる。苦手をわざわざ公共の電波で放映するテレビ番組で告白するのだから、そこに苦渋の一端が示されてもおかしくないはずだったのだが、このケースは全くそうではなかった。
この苦手談議は、一部で見られる「文系優位(理系軽視)」の風潮を反映しているように思われる。「理系=技術」とした上で「理系は文系に従属するもの」という発想があったのだろう。テレビ業界(メディア全体も)は文系優位だし、政界が文系優位なのは政治家の経歴を見れば一目瞭然だ。
「文系・理系」という二分法は日本では著しいが、海外ではそれほど明確に分かれてはいないらしい。日本のエリートは仕事の話しかしない(できない)との話も聞く。経営者が芸術や文化の話をすると、奇異なこととされる空気は何となくありそうだ。経営が全てで、芸術なんぞに関わっているヒマはないということか。
硬直した文系・理系の二分法を見直す話が、大学内部で始まったらしいことは断片的に伝えられている。少しは事態が望ましい方向へと進み始めてはいるのだろう。