【上昇気流】(2022年10月12日)

2022年のノーベル物理学賞に左からフランスのアラン・アスペ氏、アメリカのジョン・クラウザー氏、オーストリアのアントン・ツァイリンガー氏(Wikipediaより)

2022年のノーベル物理学賞に、物質を構成する原子や電子に「量子もつれ」という特殊な現象が起きることを実験で示し、量子情報科学という新しい分野の開拓に貢献した研究者3人が選ばれた。

世界が注目する量子コンピューターや量子通信の基礎となるもので、今回の受賞はさらなる開発にお墨付きを与えられたようなもの。競争がさらに激化してくるのは目に見えている。

わが国では量子もつれに関連する実験で、東大教授の古澤明氏が、光のペアで情報を瞬時に移す「量子テレポーテーション」の完全な形での実証に世界で初めて成功している。ノーベル賞の有力候補とされてきた。

技術経営の分野で「魔の川」という言葉がある。研究ステージと製品化に向けた開発ステージの間に存在する障壁のことで、基礎研究から製品化を目指す開発段階へ進めるかどうかの関門のこと。

この障壁の突破力が日本の企業は弱いといわれる。米国の大学は企業に「うちにはこんな技術があるが、おたくのあの製品開発で使えないか」といった提案をよくする。しかし日本は企業内の研究成果の利用法を最初から決め付け、想定通りに利用できないと研究だけで終わらせてしまう。

「魔の川」はリチウムイオン電池開発で19年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が受賞会見で話題にしたテーマであり、本人も何度かその壁にぶち当たったという。産官学が協力し魔の川を突破し、量子技術開発を進めたい。

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