「笑わない数学」(NHK総合)というタイトルで放送された番組が終了した。全12回。司会はお笑い芸人の尾形貴弘さん。数学の番組なぞ民放ではほぼ絶対にあり得ない。どうせ難解で面白くもないだろうと思って見たが、想像以上に興味深いものだった。
例えば「カオス理論」。大砲を撃つとき、45度の角度で発射しても、46度でも大差はない。数学者も含めてそう考えていた。
ところが、小さな差が大きな結果の違いをもたらすことが次々と発見された。気象であれ、経済であれ、生態系であれ、予測不可能と思われる不思議な現象がしばしば現れた。
「ブラジルでチョウがはばたくと、北米で株価が変動する」といった比喩が、全くのデタラメではないことも分かってきた。むろん「チョウのはばたき=株価の変動」というわけではない。チョウはどこでもはばたいているからだ。
運動法則自体は一定のものであっても、多数の要素が組み合わされると、予測不可能な現象が生まれることがあるというのがカオス理論だ。これも数学の一分野だ。
数学は学校で習う重要科目だ。得意不得意はともかく、生きていく上で数学から逃げるわけにはいかない。数学嫌いは多いが、そんな人間でもカオス理論に接すると、数学の面白さの一端に触れる思いがする。数学が世界の本質に深く関わっているらしいことを改めて教えてくれた点で「笑わない数学」が貴重な番組となったことは確かだ。