トップコラム【上昇気流】(2022年9月13日)

【上昇気流】(2022年9月13日)

照ノ富士(左)を攻める翔猿。寄り切りで破る=12日、東京・両国国技館

大相撲の力士のまわしの色がカラフルになり、今やそれが当たり前になっているが、昔はほとんどが黒だった。「黄金の左」で鳴らした横綱輪島が鈍い金色のまわしを締めだしたりした頃から一気に多彩になった記憶がある。

先週放送のNHKのスポーツバラエティー番組「大相撲どすこい研」では、まわしがテーマだった。色から始まり、勝負を左右する上での重要性、その極意など、眼(め)を開かれる内容が多かった。ちなみにまわし一本の値段は平均100万円という。

昔よりは四つ相撲が少なくなったとはいえ、やはりまわしを取るか取らないか、あるいはどう取るかで、勝敗は大きく左右される。番組ではそれを数字で裏付けていた。

相手にまわしを取られないようにするため、元大関琴奨菊などはぎりぎりまできつく締めていたことが明かされる。あのがぶり寄りの上下動も、そのためだったと聞いてなるほどと思う。

相撲の醍醐味(だいごみ)の一つに小兵力士が巨漢力士を破ることがあるが、小兵力士が相手の懐に入って前まわしをつかみ上体を起こすことで勝機が生まれる。モンゴルあたりにルーツを持つ相撲が、日本でスポーツとしての面白さを増したのは、丸い土俵とまわしによるところが大きいように思われる。

神事を起源とする相撲にはさまざまなしきたり、形式が定められ、それが一つの様式美の世界をつくり上げている。そこには、強さと共に美しさを求める日本文化の特徴が息づいている。

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