カンヌ映画祭最高賞などを受賞した韓国映画「パラサイト(半地下の家族)」ですっかり有名になった韓国の半地下住宅。映画は半地下に住む貧困世帯が主人公で、格差社会に焦点を当てたものだったが、実は別の問題も潜んでいることが浮き彫りになった。先日、約100年ぶりという集中豪雨が首都圏を襲い、半地下に住んでいた一家3人などが、部屋に流れ込んできた水で溺れ死ぬという痛ましい事故が起きたためだ。
半地下住宅とは、文字通り上半分が地上で下半分が地下に埋まっている部屋。70年代、当時の朴正熙大統領が北朝鮮の再侵攻に備え、陣地や防空壕の役割を持たせるため、多世帯住宅を造る際に半地下の設置を義務付けたのが始まりだ。その後、ソウルで人口が急増して住宅不足となり、用途変更で半地下に人々が住み始め、今日に至っている。半地下住宅の大半はソウルに集中し、ソウル全世帯に占める割合は5%に達するという。
昼間でも暗く、換気がしづらくてカビが生えやすく、衛生面で良くない。ただ、家賃が安く、社会人に成りたての若者や新婚世帯などは助かっている。筆者のご近所さんには女手一つで息子を育て、大学の授業料を工面するため苦労して購入したマンションを売り払い、半地下に甘んじた教育ママもいた。半地下には映画に負けないくらいの人生ドラマが詰まっていそうだが、今回の事故で「強制引っ越し」の話まで取り沙汰されている。(U)