ラオスは、伝統的にベトナムとの関係が強い国だ。従来、中国とは、ベトナムに遠慮しながら、一定の距離を置いてきた。だが近年は中国におんぶにだっこの状態だ。
昨年末には中国・昆明とラオスの首都ビエンチャンを結ぶ高速鉄道も開通した。
ラオスには、旧ソ連から供与されたミグ21戦闘機や戦車のメンテナンスを自国では行えず、中国の技術支援に頼らざるを得ないという事情もある。
昔、メコン川を往来する貨物船に乗船し、2泊3日でタイ北部のチェンセンからラオスを経由し中国の雲南まで北上したことがある。
食事は丸テーブルで船員らと一緒だった。その折、中国人船長にラオスでは、何が売れるのか聞いた。その答えは至ってシンプルだった。
「何でも売れるさ。ラオスではマッチさえ作れないのだから」
メコン河を航行すると、川岸の木々が根元から濁流に洗われている光景を目にする。あばら骨のような根をさらしながら、それでも精一杯生存しようと踏ん張っている姿は、けなげではあるが、なぜかラオスの国そのもののようにも見える。
ラオスの小さな市場に中国やタイの製品が怒涛のように押し寄せ、ビエンチャンなどで市民がテレビのチャンネルを合わせているのは専らタイの放送でもある。氾濫する外国製商品や膨大な情報洪水にさらされて、あと一押しされれば根こそぎ持っていかれそうな危うさを感じる。(T)