「所変われば、品変わる」ということわざがある。ブラジルでの食体験は、「国変われば、食変わる」のごとく、いまだに驚かされることがある。ブラジルに初めて来た時に驚いたのが、食事の際にコーラなどの炭酸飲料を一緒に飲む習慣があることだ。ハンバーガーやホットドッグならまだしも、白米付きの定食や肉料理と一緒にコーラを飲む様子は、さすがに新鮮だった。
サンパウロには、日本の「すき家」があり、筆者も利用している。ブラジルのすき家はメニューや店内の様子が日本と全く異なっており、ちょっとしたレストランのようになっている。牛丼やカレーライスだけでなく、担々麺まで揃(そろ)う各種ラーメンやとんかつ定食、トロピカル風のドリンクセットなど、メニューの多さは日本の「ファミレス並み」と言っても過言ではない。
筆者は、注文するものがいつも決まっているので、メニューをじっくりと見ることはほとんどない。だが、先日、すき家が初めてだというブラジルの知人と一緒に行った際に、メニューをじっくりと見て驚いた。「とんかつラーメン」に「唐揚げラーメン」。唐揚げはまだ理解できるが、とんかつがラーメンのトッピングになっているメニュー写真は、にわかに信じ難いものだった。
確実に胸焼けすることが分かっていたのでチャレンジはしなかったが、店員によると人気メニューなのだという。「ラーメンにとんかつを載せたら衣が駄目になる」とも思ったのだが、それこそ、ブラジルの顧客にしてみれば「余計なお世話」となるのだろう。
ブラジルのことはそれなりに理解したつもりだったが、とんかつラーメンに筆者の文化理解に対する自信が打ちのめされた。(S)