【上昇気流】(2022年8月5日)

2日、台北・松山空港に到着したペロシ米下院議長(中央)=台湾外交部(外務省)提供(EPA時事)

ペロシ米下院議長の訪台で面子(めんつ)を潰(つぶ)された中国が、台湾周辺で軍事演習を行い圧力を加えている。発射した弾道ミサイルのうち5発は日本の排他的経済水域内に落下したもようで、岸信夫防衛相は強く非難した。

中国の習近平国家主席は7月、バイデン米大統領との電話会談でペロシ氏の訪台計画について「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ」と威嚇・警告した。凄(すご)い言葉だが、こういう表現は北朝鮮もよく使う。

「白髪三千丈」のような大袈裟(おおげさ)なレトリックを好む文学伝統を両国が共有していることがベースにあるだろう。同時に、共産主義独裁国家共通の精神構造があるようにもみえる。

しかし今回は中国が威嚇するほど、ペロシ氏も米政府も引くに引けなくなった。訪台を断念すれば威嚇に屈したことになり、中国に誤った自信を付けさせてしまう。台湾や同盟国も米国は本当に当てになるのかと疑念を深めただろう。

訪台前、NHKは「訪台すれば台湾海峡の緊張が一気に高まることが懸念される」と結んでいたが、断念すればどうなるかは問題にしない。こんなコメントは、融和的であれば戦争は起きないという間違った発想を国民に植え付けるだけだ。

政治や外交は言葉の戦いでもある。論理的なだけでなく、時には文学的表現で情感にも訴えなければならない。ただ、それが独り善がりであったり結果的に無視されたりした場合、かえって滑稽に聞こえてしまうことを覚悟しなければならない。