【上昇気流】(2022年7月4日)

メダカ

メダカは戦前から戦後の一時期、都会人の手軽な観賞魚として不動の地位を占めていたようだ。以前、千葉県成田市の熱帯魚などの卸・小売の業者に、先代の話として戦時中のエピソードを聞いたことがある。

当時、その店に「おじさん、メダカいる?」と、ちょっとした器を持って買いに来る人が、毎日1人、2人といて絶えることがなかったそうだ。こういうことが後に食料事情もままならなくなった終戦前後まで続いたのだという。

当時の社会状況からして、メダカの飼育、観賞など本当にあったのかと思う人もいるだろうが、「普通の家庭でも少なからずいて、家族はずいぶん癒やされただろう」と先代が明かしていたそうだ。

今は新型コロナウイルス禍で、自宅内のわずかなスペースで手軽に飼育できるペットの需要が増え、その中にメダカも含まれる。ホームセンターなどで安価で売られているが、ふ化技術を駆使し彩色された個体のうちには1匹10万円を下らないものも。

かくしてメダカは観賞用として“復権”したのだが、残念なことに環境省のレッドリストで絶滅危惧2類に分類されてしまっている。

水田の面積が減少した上、周辺の水路がコンクリートで固められ、棲息(せいそく)場所がなくなってきたのだ。鳥や虫など「水田の動物たち」の減少が後に続いている状況だ。メダカは人工的にふ化され観賞用としては残るかもしれないが、自然の存在としては絶滅――というのでは悲し過ぎる。

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