
高齢者というと、どうしても精神的にも肉体的にも成熟して大人の風格というイメージが重なっていたが、最近はそうでもないと思うことが多い。
高齢者のことを扱った本、例えば、藤原智美著『暴走老人!』(文藝春秋、2007年)などを読むと、若者よりも切れやすい高齢者の話が載せられていて慄然(りつぜん)としたことを覚えている。
少し注意されただけで、怒鳴ったり、チェンソーを翌日持ってきてコンビニで暴れたりと、そのサンプルはあきれるほどだった。
だが、筆者自身、高齢者になってみると、切れやすくなっている背景が分かるような気がした。
精神の未熟さもそうだが、肉体的な衰えなどで、こらえるという忍耐が肉体的にも感覚的にできにくくなっているということがあるのだ。
そんな高齢者の犯罪などの実態を描いたのが、新郷由起著『老人たちの裏社会』(宝島社、2015年)である。
両書には、約8年ほどの差があるが、高齢者の犯罪はむしろ暴発というよりも、どこか常習的な気配さえあるほど。
万引きや暴行、ストーカーなど、驚くほどの犯罪意識が乏しい実態が明らかにされている。
本書の宣伝文句には、「死ぬよりも、上手に老いることの方が難しい時代になってしまった」とある。
まさに、なるほどと思ってしまう言葉だ。
(鷹)