【上昇気流】(2022年6月30日)

マルタの崖と青い海

地中海世界は古代文明の揺籃(ようらん)の地だった。幾つもの文明が折り重なって築き上げられた文明圏。ギリシャ人が植民地を広げ、ローマ帝国によって統一事業が成し遂げられた。

その後、帝国は内部分裂し、イスラム勢力が拡大していく……。冷戦が終わった現代、どうなっているかと言えば、先進国、新興国、発展途上国があり、経済レベルは不均質で内政面も著しく相違している。

亀裂が深いのは北部と南部・東部で「不均質」と「分断化」は西欧への移民となって表れた。2014年にシリア、エリトリア、サハラ以南のアフリカから難民が急増し、翌年にはアフガニスタン、イラクからも大勢の人がヨーロッパに。

内戦や「アラブの春」による法秩序の崩壊がきっかけだ。欧州連合(EU)によると16年から18年に300万人を超えた。これを主題にした映画が製作され、著作物も刊行された。

ジャンフランコ・ロージ監督の「海は燃えている」は16年度ベルリン国際映画祭で最高賞を受賞。女流作家ジェニー・エルペンベックさんの『行く、行った、行ってしまった』は同年トーマス・マン賞を受賞した。

だが難民問題は解決されるどころか、事態はより深刻になっている。今月20日は「世界難民の日」。ロシアによるウクライナ侵攻も加わって5月には1億人を超えたという。21年末時点でシリア680万人、ベネズエラ460万人、アフガン270万人。地球は船長のいない難破船のようだ。

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