大統領府の移転に伴い市民に開放された青瓦台を見学した。移転前も青瓦台には特派員として出入りできたが、常駐記者たちの部屋や記者会見場がある「春秋館」など限られた場所だけ。それだけに好きな場所を好きなだけ歩き回れる一般公開に期待が膨らんだ。
訪れたのは平日の朝だったが、入場開始の30分以上前から長い行列。多くは高齢者のグループだったが、中にはリードにつないだ犬を連れて来る人もいて、「おしっこやウンチをさせにきたのかね」と陰口をたたかれていた。正門から入り、まず向かったのは「本館」。レッドカーペット敷の階段を上って2階に行くと、大統領執務室があった。ここはよくテレビに出てくる部屋だが、規制線が張られ、実際に椅子に座ることはかなわなかった。
ここから10分ほど歩いて行くと大統領が生活した「官邸」が現れた。平屋の風格あるL字型韓国式家屋で、中には入れず外側から半開きの窓越しに各部屋をのぞき込んだ。居室、寝室、衣装室、食堂、台所、美容室などがあり、歴代大統領の生活の一端を垣間見られる。
敷地は広大で全体的に緑が多く、庭園もあちこちにある。散歩するのもよし、ベンチに座って弁当を広げるのもよし。都会のど真ん中にある立派な公園といっても差し支えない。横を歩いていたある高齢男性は「こんないい場所を5年間も独り占めにしていたとは…」とポツリとこぼしていた。格差社会に生きる庶民の本音だろう。(U)