都下の拙宅に配布される市広報誌の直近の特集は「風水害対策」。「『いつかやろう』ではなく『今日やろう!!』」「風水害への対策、できていますか?」と問い掛け、基本的な気象情報の入手方法、ハザードマップの一部、避難行動の手順などが示されている。
かつて、わが国の防災対策は地震や水害に弱い箇所の補強措置が中心で、地震では予知に力を入れる時期もあった。「防災の要諦は、災害をなるべく減らすこと」と提案すると「生ぬるい」と言われたと都の防災担当者から聞いたことがある。
しかし今日では、住民の自主的行動を促し、被害をできるだけ軽減する「減災」の方向がはっきりしている。先の広報誌の通りで、防災の実効力を着実に上げていると言えよう。
このほど、防災は防災でも感染症対策で、政府は「感染症危機管理庁」を新設し、その研究と臨床の拠点を一体化して有事に備えることを決定した。
その言や良しだが、感染症への普段の対策はどうなるのか懸念も残る。例えば医療資源の増大が正当化され、それを目標とした活動で済まされてしまうことはないか。
医療への社会的期待は高まっている。もっとも日本は、病床数だけでなく、医療従事者や集中治療室(ICU)の数においても、欧米先進国と比べて決して少な過ぎるということはない。司令塔機能の強化はもちろんだが、地域・民間の力を結集させるため「減災」という指針を高く掲げるべきだ。