NHK・BSのスポーツ・バラエティー番組「大相撲どすこい研」は、大相撲の現役力士や親方が登場し、体験を交えて深掘り解説する。「そういうことなのか」と感心させられ、大相撲を観(み)るのが何倍も面白くなる番組だ。
先月は、突っ張りを得意とする現役の大栄翔、阿炎に加え、元関脇寺尾の錣山親方、元大関千代大海の九重親方がその極意を明かした。
突っ張りでは腕の回転スピードが重要なのはもちろんだが、九重親方が強調したのは相手力士との距離。親方は「え、それ言うの」と言いながら、腕が完全に伸び切らない1㍍10㌢ほどと語った。
計算され尽くした距離を保って勝利したのが、平成15(2003)年春場所千秋楽で横綱朝青龍と優勝を懸けた一番。この時は、普段より相手との距離をやや詰めた。横綱が回しを取れるか取れないかくらいの距離を保ち、横に動かないで正面から回しを取りに来るように誘い、突っ張り続け、最後は土俵の外に突き出した。
大変な頭脳戦法と感心させられた。少し飛躍するかもしれないが、ウクライナとロシアとの戦いに重ねると、ウクライナの勝利は、どれだけロシア軍を突っ張り続けられるかに懸かっているのではないか。
ロシアと四つに組んで勝ち目はない。しかし、適当な距離を保って突っ張り続ければ、最後は土俵(国境)の外に押し返すことはできるのではないか。そのためにも、突っ張りの回転数を高める西側の武器援助が重要だ。