政府はかつて隆盛を誇った半導体産業に対し、税金も投入し、その復活を目指す方針だ。官民一体となって基幹産業としての立場を固めてほしい。
1980年代、日本は米国を抜いて世界トップのDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)生産国となった。だが、そのわずか20年後には国際市場を失うほど凋落(ちょうらく)してしまう。
その理由について湯之上隆著『日本「半導体」敗戦』では、一流半導体メーカー内が「極度に専門化した要素技術(引用者注・製品を構成する要素に関する技術)者」の集まりとなってしまい、「互いの技術の“擦り合わせ”ができなかった」からだという。
擦り合わせとは、製品本来の性能を発揮させるため、構成する部品や材料の微妙な調整を相互に行うこと。湯之上氏は「すべての技術者が、全体を俯瞰した上で、自身の専門分野を最適化できるようにすべき」と忠告している。
これは今日、日本の一部大手メーカーが抱えている問題だと言えよう。三菱電機や川崎重工業下請け企業の自社製品の不正検査が相次いで発覚している。社内の各セクションの技術力を絶対視し“擦り合わせ”の重要性を考えず、その過程を軽視してしまったせいだ。
「安全性に問題はない」(三菱電機幹部)との弁明で国内消費者を納得させられるかもしれないが、海外評価は決して甘くない。半導体産業復活には、この“習い性”をぜひ克服しなければならない。