【上昇気流】(2022年6月19日)

太宰治(Wikipediaより)

「他郷にてのびし髭剃る桜桃忌」(寺山修司)。きょうは、1948年6月に入水自殺した太宰治を追悼する「桜桃忌」である。ゆかりの東京・三鷹市の禅林寺には、全国からファンが集まる。

太宰にはファンも多いが、アンチも少なくない。代表的なのが、作家の三島由紀夫。わざわざ太宰を訪ねて「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」と言ったことは有名な話だ。この発言を読んで、気流子もある時期、太宰文学を敬遠するようになったことがある。

それが変わったのは、太宰を再評価する思想家の吉本隆明のエッセーなどを知ってから。その意味では、自分自身ではなく、他者の批評に左右されていたということだろう。

太宰文学には青春の時期特有の苦悩に通じるものがあって、青少年がはやり病のように一時期、取りつかれる面があることは確かだ。大人になってから気恥ずかしくなって、アンチに変わることはあるかもしれない。

ところで、この「桜桃忌」という俳句の季語について、稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』(1996年版)を調べてみると収録されていない。インターネット検索で引用の句を探し当てたのだが、寺山は太宰と同じ青森県出身で、シンパシーを感じることがあったのだろう。

季語が歳時記に取り上げられる基準はよく分からないが、知名度や俳句結社の文学観にも左右されるようだ。その意味では、太宰は今でも毀誉褒貶(きよほうへん)の多い作家である。