【上昇気流】(2022年6月18日)

田中角栄氏(Wikipediaより)

半世紀前の1972年6月、田中角栄氏(当時通産相)が一冊の書を世に放った。『日本列島改造論』――これをもって自民党総裁選を制し7月に第64代首相に就任した。最近、何かと話題になるので本棚の奥から取り出した。

序文はこう書き出す。「水は低きに流れ、人は高きに集まる」。農村から都市へ、高い所得と便利な暮らしを求めて人々は流れ工業化を成し遂げたが、逆に地方の過疎化は深まるばかり。このままでは祖先と子孫に申し訳が立たない――。その情念が伝わってきて、思わず読み続けた。

結びは「故郷はたとえ貧しくとも、そこには、きびしい父とやさしい母がおり、幼な友達と、山、川、海、緑の大地があった」と古里への憧憬を語り、「日本じゅうの家庭に団らんの笑い声があふれ、年寄りがやすらぎの余生を送り、青年の目に希望の光りが輝やく社会をつくりあげたい」と抱負を語っている。

列島改造論は土地投機を招き、オイルショックの「狂乱物価」の追い打ちで評判を落としたが、そんな政策の善しあしよりも、基底に「家族」があるところが新鮮だった。幸福の源泉はいつの時代にあっても家族だと思い知らされる。

来る参院選での自民党のキャッチコピーは「決断と実行」だそうだ。これは田中氏が率いた72年12月総選挙の自民党のそれと同じだ。

今回は列島改造よりも「防衛改造」が問われている。むろん、その基底にあるのは「家族を守る」だろう。