ウクライナ軍が東部で厳しい状況に追い込まれている。火砲はロシアの10~15分の1しかなく、砲弾も不足しているというから当然だろう。多連装ロケットシステムや榴弾(りゅうだん)砲など重火器の支援を西側に要請している。
米国を中心にブリュッセルで関係国会合が持たれたが、そもそも西側はどこまでウクライナを支援しようとしているのだろう。この戦争の焦点はロシアの力による現状変更を阻止することができるか否かにある。
ウクライナは、侵攻以前の状態にまで戻すことが勝利であり、戦争の目的としている。この目的に沿って支援すべきだろう。
しかし、適当なところで停戦を実現したいというのが仏独伊の本音なのかもしれない。マクロン仏大統領など「ロシアに恥をかかせてはならない」と言って顰蹙(ひんしゅく)を買ったくらいだ。
1938年のミュンヘン会談で、英仏首脳がナチス・ドイツのヒトラーに譲歩し、チェコスロバキアのズデーテンの割譲を認めたことが、第2次大戦への引き金となった。その轍(てつ)を踏んではならないとの声があるが、実際にはロシアが戦争を拡大させていく力があるかどうか。それよりも中国が問題だろう。
ロシアの力による現状変更を西側が阻止できず、それを世界が追認するような空気が生まれれば、中国は必ず「台湾統一」の好機到来と考えるだろう。それは軍事侵攻という形を取らずに済むかもしれない。ウクライナでの戦いの帰趨(きすう)は、東アジアに直結している。