【上昇気流】(2022年6月15日)

黒澤明と勝新太郎(Wikipediaより)

NHK総合のドキュメンタリー番組「アナザーストーリーズ」で、黒澤明と勝新太郎の対決を描いた作品を見た。映画「影武者」(1980年)の監督と主役の全面対決だっただけに、近頃の芸能スキャンダルとは全く違った人間ドラマとなった。

完全主義者の監督と、自由奔放の主役。作り込む監督と即興を好む俳優(武田信玄とその影武者の2役)。水と油のようなものだが、黒澤は「最後は勝が従うだろう」と思ったのではないか。読み違いは勝の側にもあった。「俺のやり方はある程度は認めてもらえるはず」と考えたかもしれない。お互いさまだ。

第三者がいれば直接対決が避けられた可能性もあった。それもないままの監督と主役の対立となれば、監督が強い。結果は勝の降板となった。79年夏のこと、40年以上も前の話だ。

大物同士の対決に世間も沸いた。なお黒澤は、勝よりも20歳年長だ。代役を務めたのは仲代達矢。興行成績は良かった;

それにしても、40年前はムキ出しの抗争が多かった。芸能界であれ何であれ、今は何かの対立があったとしても、あからさまになることは少ない。危機管理も行き届いて、温和に巧みに事は処理される。

だから今、黒澤と勝の対立が新鮮なものに感じられるのだ。ところで、公開された「影武者」の出来はどうだったかと言えば、映画作品としては物足りないというのが劇場で見ての印象だ。勝が演じたとしても、果たしてどうだったか。

spot_img
Google Translate »