宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取し、地球に持ち帰った砂からたんぱく質の材料となるアミノ酸が20種以上見つかった。地球の生命起源の材料が隕石(いんせき)などの形で宇宙空間から飛来したという説を後押しするものだ。
その一方で、今回の成果について「アミノ酸が宇宙に普遍的にあるとすれば、地球外生命も同じようなたんぱく質を使う可能性がある」とみて、さまざまな生命の形態を考える専門家もいる(小紙7日付社会面)。
なるほど、と思う。物理学者の寺田寅彦は「科学はやはり不思議を殺すものでなくて、不思議を生み出すものである」とエッセーに書いたが、さらなる小惑星の探査に大いに期待したい。
生命の謎はわれわれの身近なところにもある。例えば人間の体液の主要成分元素を量の多い順から見ると、水素、酸素、ナトリウム、塩素、カリウム、炭素、カルシウム、マグネシウムの順。海水のそれと比べると順位に若干の違いはあるが、極めてよく似ている。
人間は体の中に「海」を持って生きていると言えるが、なぜそうなのか。「生物が海で誕生したから当然だ」で済ます学者もいるが、海と人体の関わりについては未知の分野が多く、解明しなければならない課題は少なくないようだ。
生命とは何か。そして、なぜ生命が大切で生命倫理が必要とされるのか。今こそ科学者、哲学者らが話し合う共通の場が欲しい。