大変な物知り、異能の持ち主というべき子供たちが全国には少なからずいるようだ。私事で恐縮だが小学5年の時、横の席のK君が「先生の言っていることは違う」と時々囁(ささや)いていた。ある時、先生が「ものは自然には光らない」と話したが、彼は「いや、自分で光を出すものがある」と呟(つぶや)いて素知らぬ顔をしていた。
K君はその時、キュリー夫人の発見したラジウムの光のことを言っていたのだと気流子が思い至ったのは、ずっと後。授業中は退屈だったのかもしれない。
このほど文部科学省は、通常の授業では易し過ぎて苦痛を感じたり孤立したりする子に対し学習支援することを決めた。2023年度予算概算要求にその費用を盛り込むことを検討している。
報道によると、対象となる子は知能指数(IQ)で選抜せず、教師からの推薦などで柔軟に選ぶ方針。ぜひ異能に磨きを掛ける機会にしてほしい。政府の意欲的な試みを支持したい。
ただ、問題は支援内容。今のところ高度なオンライン教育を行ったり、大学やNPOなどで指導を受けられるようにしたりするなどが挙がっているが、紋切り型の知識教育の様相も。
子母澤寛著『ふところ手帖』(中公文庫)に、徳川家康がある名家の子弟の兵法教育を自ら手掛け、5年目に皆伝を与えた話が出ている。子母澤は「家康自身、一人前の兵法者を作る程の腕があったのである」と驚いている。子供たちをどう導いていくか、指導者の力量が問われる。