以前、ソウル北西部に位置する20階建てアパートの最上階に住んでいたことがあった。高台にあったので、実際は30階建て最上階くらいの高さだったと思う。ベランダから遠くを眺めると、飛行機が東から西に向かって30秒間隔くらいで次々に飛んで行くのが見える。向かう先はソウル南西部にある金浦国際空港。仁川国際空港が開港して以来、国内便が主流だが、それでも飛行機が頻繁に到着する「空の玄関口」であることを実感したものだ。
その金浦空港をなくそうという話が持ち上がり、物議を醸している。言い出したのは、地元選挙区から国会議員補選や地方選に出馬する野党候補たちだ。理由は広大な敷地にアパート団地を造成するため。騒音に悩まされてきた地域住民の不満解消も見込んいる。
だが、金浦空港がなくなれば都心からさらに遠い仁川空港を利用しなければならなくなる。与党からは早速、「ソウルの東部や北部に住む市民の不便を無視するのか」と、猛反対の声が上がった。
かつて「キンポ(金浦)」と言えば、韓国の空港の代名詞だった。日本から飛行機に乗って降り立つと、ターミナル全体にニンニクの匂いがプーンと立ち込め、「さすがキムチの国」と妙に関心したこともあった。
市民にとって新しく広い空港もいいが、昔からなじんでいる空港への愛着もあるはず。コロナ禍でストップしていた、羽田と金浦を結ぶ定期便が近々再開するというから、一時帰国の際に利用して金浦の魅力を再発見したいと思う。(U)