【上昇気流】(2022年5月25日)

H-IIA23号機(Wikipediaより)

戦後、わが国の宇宙開発事業で試練が続いたのは1990年代末。現在も運用が続くロケットH2Aの前のH2開発時代に、打ち上げの失敗が相次いだ。99年には鹿児島・種子島宇宙センターから打ち上げられた8号機が、4分後にエンジンを停止し、海に落下した。

当時の宇宙開発事業団(NASDA)研究センターのある幹部が「上司から『オリンピックでも、選手団を送り込んでメダル一つ取れないのなら意味はない』と言われた」と苦り切っていたのを思い出す。宇宙航空研究開発機構(JAXA)に改編されたのは2003年。

失敗の2年後、H2Aの打ち上げに成功した。技術者たちの汗と涙の結晶だったというほかない。その後、世界の宇宙開発競争が激化したが、日本はその一角を担っている。

政府は年末に予定する宇宙基本計画工程表の改定に向け、ロケット打ち上げ能力強化などを盛り込んだ重点事項を決定した。

ウクライナに侵攻したロシアのロケットを活用できないことから、岸田文雄首相は「わが国の打ち上げ能力を抜本的に強化する」と表明。JAXAなどが開発中の新型ロケットH3の早期実用化を通じ、「複数の人工衛星を高い頻度で打ち上げることを可能にする」という目標を示した。

H3はパワフルで安価。高い信頼性の確保を目指し今後20年間、宇宙利用の“牽引(けんいん)車”と見込まれるロケットだ。何度も挫折し乗り越えてきたロケット技術者たちの負けじ魂を見たい。