【上昇気流】(2022年5月16日)

いて座Aスター(Wikipediaより)

リング状の光り輝く物体――地球から約2万7000光年離れた天の川銀河の中心にある「いて座Aスター」の巨大天体。一昨日の紙面に載った写真で、これがブラックホールであることを初めて視覚的に示した。「イメージ通りだ」と快哉(かいさい)を上げた読者もいるのではなかろうか。

ブラックホールはアインシュタインが一般相対性理論で予言したものだが、20世紀中はほぼ理論上のものにとどまった。しかしここ20~30年の観測・撮影技術の劇的な進歩があり、今回、日本人研究者らの参加する国際共同研究プロジェクトが成果を挙げた。

この一世紀、宇宙観の変遷が目まぐるしい。米天文学者ハッブルの膨張する宇宙や、銀河、大銀河の相対的関係を示した新しい宇宙像など。その要の位置にあり、中心的な力の存在であるブラックホールの研究進展が待望され、それに類する成果がノーベル賞の対象になってきた。

この成功でブラックホールの質量分析が進むという。さらに宇宙の在り方、構造、その中の人間の位置付け、人間と宇宙との関係がより明らかになることを願いたい。

ブラックホールの名付け親はホイーラーという米国の物理学者。天の虚空を指し示すようで、実にうまいネーミングだ。人類は宇宙への視野を広げ続けた。

一方、地下の研究はまだ十分に進んでいない。宇宙は天地の広がりであるから“足場”の探求も要る。優れた海底探査技術を持つ日本の活躍がここでも期待されている。