沖縄の本土復帰とともに配備された自衛隊は、本来の任務ではなかった緊急患者空輸を1972年に開始し、今年4月に搬送数が総計1万件を超えた。
このことを感謝する決議が4月25日の那覇市議会で、共産党を含む賛成多数で可決された。
その内容は、50年もの間、那覇市の消防局や医療機関と連携しながら緊急患者空輸を遂行し、それ以外にも不発弾処理や行方不明漁船の捜索など、「市民・県民の生命を守る活動を継続して行っている」というもの。同じく離島患者空輸を行う海上保安庁とドクターヘリに言及した上で、「本土復帰50年に際し、関係機関並びに関係各位における市民・県民の生命を守る任務遂行に対して、深甚なる敬意と感謝の意を表す」とした。
決議は自民などのほか、共産の5人を含む20人が賛成して可決された。反対2人、退席15人、欠席2人だった。公明と立憲民主、社会党系は退席した。
このニュースが県内で報じられると、共産党員や左派系団体の関係者から「自衛隊賛美とは何事だ」「先島への自衛隊増強を進める政権に利用されかねない」など、批判が多く寄せられた。
すると、共産党那覇市議団は2日になって、賛成したことについて「真摯(しんし)に反省する」とのコメントを出した。「自衛隊問題に関する住民感情への思慮に欠け、自衛隊の増強などに利用されかねない問題点がある」とした。
今回の市議団の“失態”は、志位和夫同党委員長が4月の党本部での会合で「主権侵害が起こった場合には自衛隊を含めて、あらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守り抜く」と話したことがきっかけの一つではないかと見られている。だとすれば、痛烈な皮肉としか言いようがない。
(T)