【上昇気流】(2022年5月11日)

超電導型量子コンピューター「IBM Q」 SCIENCE PHOTO LIBRARY/AFLO(ニューズウィーク日本版より)

政府は量子技術を将来の社会経済システムに取り込むための戦略を決定した。2030年を視野に量子技術による生産額を50兆円規模に拡大したり、国産の量子コンピューター初号機を22年度に整備したりするなど、すさまじい意気込みだ。

量子コンピューターは従来のコンピューターに比べ、桁違いの高速で計算処理ができると言われる。ただ、物理学者の古澤明さんによると「(そのための)アルゴリズム(引用者注・計算手続きのこと)は限られており」「大きな研究課題の1つ」(『光の量子コンピューター』集英社刊)だ。

つまり量子コンピューターの技術開発は、のるかそるか、オール・オア・ナッシングであるが、日本はこの種の開発方式に馴染(なじ)んでいない。1970~80年代、日本を成功に導いた半導体技術はまず米国で種がまかれ、その発展形態を素早く官民が見定めて見事な花を咲かせた。

日本の企業は、見通しの利く技術でないと参入に二の足を踏む。量子コンピューターの場合、研究機関はともかく企業の食い付きは良くないのではないか。米中欧など各国が力を入れる開発競争で、今のところ政府主導のバスに乗り遅れるなの感が強い。

わが国は基礎力の確かな原子力技術を持っており、最近では米国に高速炉の共同開発を請われたほど。得意分野の原子力のイノベーションにより、他分野との融合を進め、社会、経済の諸問題の解決に努めることを忘れてはならないだろう。