蓄音機の父 ホーンの別荘 明治の館/栃木県日光市

栃木県日光市の輪王寺の東側に明治の館がある。今では西洋料理の店として知られているが、料理店となったのは昭和52年から。建てられたのは明治後期で竣工(しゅんこう)は不詳。平成18年に国登録有形文化財に指定された。

建造したのは米国人F・W・ホーンで、日本の「蓄音機の父」と呼ばれた人物。日本コロムビアの前身をつくった人だ。

壁面は日光石を使った「乱れ石積み」によるもので、ジョージアン様式だという。エントランスの屋根を支える4本の柱も、暖炉の煙突も同じ石材で、重厚感があり気品もある。建造に想像以上の月日を重ねたという。

建物の前は庭園風の広場で、ベンチやソファーがあり、料理の順番待ち時間に、座って鑑賞している人たちがいる。

この建物の通りを挟んだ下にあるのが、天台宗の禅智院で、内村鑑三が1915年夏に避暑で過ごした宿泊所。この辺りの様子をこう記している。「日光は美しい所で、外国人が多く滞在していて、外国の街のようです」と。

隣が明治の館だったわけで、ホーンのこの別荘には外国人滞在者も多くいたのだろう。「外国の街のようです」と言ったのは、明治の館を暗示しているようでもある。

戦時中には外相の重光葵(しげみつまもる)がここに疎開していて、ミズーリ艦上での降伏文書調印式には、ここから出掛けたと伝えられている。

中に入ると、床も内装も昔のままで古色蒼然(そうぜん)。使用されてきた歳月を刻んでいる。人気の料理はエビの入ったオムレツライスだ。

(増子耕一)