【上昇気流】(2022年5月5日)

治療や休息のため、前線から戻ったウクライナ兵=4月30日、東部ドネツク州クラマトルスク近郊(AFP時事)

ウクライナ東部のドンバス地方では、支配拡大を目指すロシア軍とウクライナ軍との激しい攻防が続いて膠着(こうちゃく)状態にある。ロシア軍の作戦に遅れが生じているとの分析もある。

ウクライナ育ちの作家アンドレイ・クルコフ氏が、ドンバス地方を舞台にした長編『灰色のミツバチ』を発表したのは2018年。彼は1961年に旧ソ連のレニングラード(現サンクトペテルブルク)近郊に生まれ、幼少期に移住。

2014年にロシアによるクリミア半島併合が報道されたが、その後ウクライナのことは忘れられていく。そのような時にこの小説は発表された。ロシア文学者の奈倉有里さんが著書『夕暮れに夜明けの歌を』(イースト・プレス)で紹介している。

ドンバス地方では紛争が続いている。しかし「グレーゾーン」に留(とど)まる住民もいて、スタログラドフカ村でミツバチを飼っている主人公セルゲイもその一人。妻と娘はすでに避難していた。

彼は紛争には関与したくなく、白にも黒にもなりたくなかった。それで「灰色(セールィ)」と呼ばれている。電気は止まり食料も手に入りにくいが、ウクライナ兵士が時々食料を持ってきてくれた。

そんなある日、友人がロシア側の兵士を連れて遊びにやって来る。2人は大喧嘩(おおげんか)し、セルゲイはミツバチと共に村を去る。旅先ではロシア人ともウクライナ人とも交流するが、警戒され疎まれ、居場所がなく、村に戻って来る。紛争はそこだけの紛争ではなかったというのだ。

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