味のアイデンティティー 韓国から

外国暮らしが長くなると、誰しも和食が無性に食べたくなるもの。残念ながら「日式」と呼ばれてきた韓国式和食ではなかなか満足できないものだ。韓国食は味のベースが「コチュジャン」(唐辛子みそ)や「コチュカル」(粉唐辛子)、胡麻(ごま)油、ニンニクなどで、醤油(しょうゆ)や塩、胡椒(こしょう)がベースの和食とはかなり違う。「フェートッパッ」(韓国式マグロ丼)にコチュジャンをドバっとかけて食べるのは、いまだにためらう時がある。

だが、韓国人も同じように日本で韓国食を食べると、味のアイデンティティーが頭をもたげるようだ。韓国料理屋で出てくるキムチは日本人向けにアレンジされていて「甘い」ため、物足りないらしい。以前、一時帰国した際に知人の韓国人と日本そばを食べたら、「チャダ」(しょっぱい)と盛んに言っていた。醤油味に慣れない韓国人にとって、醤油のつゆを美味(おい)しそうにすする日本人の食べ方はあまり真似したくないものなのだろう。

アイデンティティーと呼べるかどうか分からないが、日本はどの料理も自分が食べる分だけ最初から皿に盛られることが多いが、韓国は大きな皿に盛られた料理を皆でつつき合って食べることが多い。つつき合いは相手との心理的距離を近づけ、家族のような間柄にもなれる「効果」があるとされる。

ただ、ここ数年のコロナ禍で感染予防に敏感になり、一人一皿方式が推奨されている。そのため本当は食べた気がしない人もいるとか。(U)