かつて「ゆとり教育」で日本の子供たちの学力が著しく低下したことがある。2006年の国際的な学習到達度調査(PISA)は散々な成績で、これを契機に「脱ゆとり」へと舵が切られた。
PISAで学力世界一に輝いたのは北欧のフィンランドだった。この国は冬には2カ月近くも太陽が昇らず、雪と氷に閉ざされる過酷な自然環境で、強大な大国に挟まれ民族存亡の危機を幾度もくぐり抜けてきた。1917年にロシア帝国から独立して以降、4度も戦争に耐えた。
教育評論家の石井昌浩氏は学力世界一をこう解説した。「本当は人間は平等ではないこと、自立しなければ世の中で生きて行けない現実、そのためには自ら進んで勉強しなければならないことを、フィンランドの子供たちは自然環境と祖国の運命の厳しさから学んできた。これこそが日本人が見失った志である」(産経新聞08年1月16日付)。
常備軍は3万5000人ほどだが、18歳から徴兵制を敷き、有事には35万人を動員する。他国を頼らず国民全てで祖国を守る「中立国」だ。
だが、ロシアのウクライナ軍事侵略で危機感を抱き、隣国の中立国スウェーデンと北大西洋条約機構(NATO)にそろって加盟申請する方針だと伝えられる。
わが国は日米同盟を結んでいるが、祖国を守る「志」はどうだろうか。「天は自ら助くる者を助く」という。同盟もまた然り。自助を軽んじる「脱ゆとり教育」では心許ない。