【上昇気流】(2022年4月27日)

石炭

ロシアのウクライナ侵攻が続いており、天然ガスや石油の供給不安から各国のエネルギー事情に大きな変化が生まれている。欧州連合(EU)の石炭火力の比率は侵攻前の10%から13%に、特にドイツでは25%から37%に急上昇。中国も石炭を増産するという。

中国やドイツは石炭が豊富で、事あれば石炭をいくらでも掘って当座のエネルギー不足の穴を埋められる。石炭増産は当然の措置という腹積もりがあるのだろう。

これに対し日本は地下資源に乏しく、こういう融通が利かない。輸入するエネルギー価格の高止まりは長期化する恐れがあり、先が見えない状況が続けば、原油高の付けが社会全体に回ってこよう。

エネルギー安全保障の要諦は、余裕のあるエネルギー供給体制をしっかり整え、自給率をできるだけ高くすることだ。例えば中国は約90%と高く、ドイツも約29%と決して低くない。これに対し日本は11・8%(2020年)。先進国間では極めて低い。

1970年代の石油ショック時は、当時の首相が半袖のスーツで範を垂れ、マスコミも「省エネこそ時代のライフスタイル」とし、国民がよくそれに応えた。原子力発電の基幹電源としての地位が固まっていった。

ところが今、大半の原発がストップし、再稼働もままならない。国民は新型コロナウイルス禍の中で生活再建にせわしい。わが国のエネルギー政策が正念場を迎えているという自覚が、政治家に足りないのでは。

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