【上昇気流】(2022年4月25日)

知床遊覧船が所有する観光船「KAZU1(カズワン)」(同社ホームページより)

北海道・知床沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU Ⅰ」が浸水し、多くの死者が出ている。捜索が続いているが、残りの乗客乗員の無事を願うばかりだ。

「流氷がつなぐ豊かな生態系、火山が生んだ山々と海岸断崖が織りなす雄大な景観」と、知床国立公園を紹介した環境省のホームページ。知床半島は2005年に世界自然遺産に登録された。

知床の魅力を存分に楽しむには船が欠かせないという。羅臼岳を望み、迫る断崖絶壁。そこには船だからこそ見られる野生動物も。ダイナミックな「カシュニの滝」へ船以外での接近は難しい。

知床だけでなく、近年の国内観光では自然の醍醐味(だいごみ)を味わってもらうというツアーが盛んだ。その名目はいいが、ガイドのスペシャリストも付かず、大ざっぱな観光プランを企画する観光業者が少なくないという。

これに対し、産業観光に詳しかった木村尚三郎東大名誉教授(故人)は以前、「観光の主役は観光客だが、観光振興を担うのは地域住民である」と話し、地元の感情無視、業者の勇み足のプランを暗にたしなめていた。

「KAZU Ⅰ」の場合、さらに運航会社の安全管理に大問題があった可能性も。当時の現場海域は約3㍍の高波と強風で、地元漁業者らは操業を見合わせたのに運航を強行した。また、出発時に「(同船の)船首付近に亀裂が入っていた」と別の会社の観光船の乗組員が指摘している。大型連休前のあまりに大きな悲劇だ。

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