龍となるコウモリ軍団 タイから

里山に暮らしていた幼少の頃、春夏の遊びの定番は野山での昆虫獲りだった。

捕虫網が活躍するのは、4月の蝶から始まりバッタやセミなど獲り放題となる夏本番で最盛期を迎える。どれもそれなりに面白いが、一番の目玉はオニヤンマだ。これほど捕まえて興奮する昆虫はいない。何せ網の中でもばさばさ音を立てるのは、こいつくらいだ。その生命力に圧倒された。

オニヤンマは高い所を猛スピードで飛ぶし、俊敏なのでへっぴり腰では獲れない難度の高さが獲得時のテンションを上げる。しかも黄色と黒の鮮烈な模様は、それだけでトンボの王様を思わせる尊厳があり子供の魂を揺さぶるに十分だった。

タイで一番、感動した生物は何かというとコウモリだ。

東部のカオヤイ国立公園にはコウモリ洞窟が点在する。中を覗(のぞ)くと上にはコウモリが所狭しとぶら下がり、下にはゲジやアメンボみたいなカモドキサシガメもいる。

だがクライマックス・シーンは、洞窟内ではなく外で展開する。空が茜(あかね)色に染まる夕暮れ時、洞窟から飛び立つコウモリ軍団が実に壮観なのだ。

コウモリたちが昼間の眠りから目覚め、夜の狩りに出掛けようとしているのだが、一筋の黒い帯となって空を流れていく。空に龍が舞うようなこの光景が、オニヤンマの生命力同様、なかなか圧巻だ。(T)