【上昇気流】(2022年4月21日)

霧降高原

東京でサクラの花が終わる頃、栃木県日光市の霧降高原に出掛けた。標高1000㍍の樹林帯の山道を歩いてみると、まだ春には遠く、草木も花開かず、目にしたのはたった1本、マンサクの黄色の花だけ。

「農村や漁村の生活にも暦によって定められた生活の基準はあるが、それは都会のそれとは違う。そして山に登って見れば、四季は人間から全く離れてただそこにある。それを四季と名附けるのも無理がある」。

エッセイスト串田孫一の『山と別れる峠』(実業之日本社)の中の一節。登山ガイド氏が案内してくれた。モミの木の葉をちぎって匂いを嗅ぐように言う。強い香りがした。抗菌作用があり消臭剤の原料になるという。

シラカバの大木があった。樹液が飲料になるというが、日本の木はカナダのそれと比べて小さいそうだ。イタヤカエデには赤いテープが貼ってあった。これからメープルシロップができるという。

シカの骨を見つけて、シカの食害について語り、けもの道や、血を吸うヤマビルの習性についても教えてくれた。よい勉強になった。その後、車で森林限界を超えたキスゲ平(1441㍍)に行った。

ここは昔、スキー場だった所だが、今はニッコウキスゲの名所。駐車場から急坂に木道が続く。入り口一帯にはシカ侵入防止の網が張られていた。赤薙山から女峰山への登山口で、木道を行くとすぐに残雪地帯。県境の山々まで見えたが、ここはまだ冬のままだった。

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